こんにちは、Softball Pitcing Labo代表の福山です!以前Xでこんなポストを目にしました。

これを投稿した方は一流のピッチャーになるならツーステップではなく、ワンステップで投げた方が良いという趣旨の発言をされていました。
確かに、ツーステップとワンステップ、どちらが良いのか?というような意見は色々あると思います。なので今回は球速を上げるにはワンステップとツーステップ、どちらがいいのかという内容で、一つの論文を参考にしながら、考察をしたいと思います。
目次
参考文献
https://sports-performance.jp/paper/1604/1604.pdf
研究の目的
本研究は、高校女子ソフトボール投手を対象に、ウィンドミル投法中の 重心速度 と 投球速度 の関係性を統計的に検証することを目的としました。
特に、投球動作を3つの局面(キック局面、踏み出し局面、リリース局面)に分け、それぞれの局面における重心平均速度が投球速度にどのように影響を与えるかを明らかにすることを目指しています。
背景
- ソフトボールのウィンドミル投法は、肩を中心に腕を回転させる動作が特徴であり、投球速度を高めるためにはその回転速度が重要とされています。
- また、地面を蹴る動作(ステップ)や重心移動が投球速度に影響を与えることが指導書や先行研究で示唆されてきました。
- 例:「力強いステップがスピードのある球を投げる鍵」(田中, 2001)。
- 「足のステップと重心移動がキレのあるボールを投げるために重要」(宇津木, 2007)。
- これまでの研究では、ウィンドミル投法中の重心速度が投球速度に関連している可能性が指摘されていましたが、統計的な分析や具体的なデータに基づく検証は十分に行われていませんでした。
- 本研究では、この関係性を明確化するために、高校女子ソフトボール投手を対象に、重心速度と投球速度の統計的な相関を分析しました。
研究方法
1. 被験者
- 対象者: ウィンドミル投法を専門とする高校女子ソフトボール投手16名。
- 平均プロフィール:
- 年齢: 15.8±0.9歳
- 身長: 1.62±0.05m
- 体重: 57.1±7.4kg
- ソフトボール競技歴: 6.7±1.4年
- 投手歴: 6.4±1.6年
- 健康状態:
- 投球腕に関する傷害歴なし。
- 長期にわたる投球不能の既往歴なし。
- 同意取得:
- 実験の目的・方法・リスクを十分説明し、全員から同意を得た。
2. 実験手法
- 撮影環境:
- 実験は公式試合で使用されるソフトボール球場3か所で実施。
- 各被験者は、ウィンドミル投法によるストレート球を5球投げ、最も投球速度が速かった試技を分析対象とした。
- 使用機器:
- ハイスピードカメラ: 側面(三塁ベース側)に設置(CASIO社製 EX-F1、シャッタースピード1/1000秒、撮影速度300fps)。
- スピードガン: 捕手の真後ろに設置(MIZUNO社製 2ZM-1035)。
- 投球条件:
- 静止ルール(2~10秒間静止)。
- プレートルール(軸脚をプレートに残したまま片脚を踏み出す)。
- 試合を想定し、全力で投球。
3. 分析手法
- 局面の定義:
- 投球動作を以下の3局面に分割:
- キック局面: 左脚離地時~右脚離地時。
- 踏み出し局面: 右脚離地時~左脚接地時。
- リリース局面: 左脚接地時~リリース時。
- 投球動作を以下の3局面に分割:
- 重心速度の算出:
- 被験者の身体を14セグメント(頭部、体幹、四肢など)にモデル化。
- 動画データを基に、身体各部分の座標値を算出。
- 各局面の重心変位を時間で除し、重心平均速度を算出。
- 統計処理:
- 投球速度と各局面の重心平均速度の関係をピアソンの積率相関係数で分析。
- 有意水準は5%未満。
結果
1. 重心速度と投球速度の相関
- キック局面:
- 重心平均速度と投球速度に有意な正の相関が認められた(r=0.652, p<0.01)。
- 踏み出し局面:
- 重心平均速度と投球速度に有意な正の相関が認められた(r=0.691, p<0.01)。
- リリース局面:
- 重心平均速度と投球速度の間に有意な相関は認められなかった(r=0.478, n.s.)。
2. 重心速度の変化
- 重心速度は以下のように変化:
- キック局面から踏み出し局面にかけて最大値に達する。
- リリース局面では急激に減少する傾向が見られた。
- このパターンは、野球投手における動作特性とも類似している。
3. 重心速度減少量と投球速度
- 重心速度減少量(最大値と最小値の差)と投球速度には有意な正の相関が認められた(r=0.505, p<0.05)。
- これは、踏み込み脚の接地によるブレーキ力が投球速度向上に寄与していることを示唆。
考察
1. 投球速度向上のための要因
- 投球速度を高めるためには以下が重要:
- キック局面で軸脚による強い蹴り動作を行い、重心速度を高める。
- 踏み出し局面で重心速度をさらに加速させる。
- リリース局面で重心速度を急激に減少させる。
- 特に、キック局面と踏み出し局面での重心速度の増加が投球速度に強く関連している。
2. 野球投手との共通点
- 野球投手においても、踏み込み脚の接地によるブレーキ力が投球速度向上に重要であることが報告されている。
- ソフトボール投手においても、踏み込み脚での「つぶれ」を防ぎ、重心速度を急激に減少させることが必要。
3. トレーニングへの示唆
- 下肢の筋力・パワー向上を目的とした以下のトレーニングが有効:
- デプスジャンプ: 着地後すぐに跳び上がる動作で爆発的な筋力を養う。
- バウンディング: 連続的な跳躍動作で下肢のパワーを向上。
- メディシンボール投げ: 全身の連動性を高める。
- 特に、踏み込み脚の安定性を高めるトレーニングが重要。
今後の課題
- トレーニング研究の不足:
- ソフトボール投手を対象としたトレーニング方法の研究が不足しており、今後の課題として挙げられる。
- 対象の拡大:
- 本研究は高校女子投手のみを対象としたため、今後は年代や性別の異なる対象者を用いた研究が必要。
- さらなる詳細な分析:
- フォースプレートなどを用いた地面反力の測定や、筋電図を用いた筋活動の分析が望まれる。
結論
- ウィンドミル投法における重心速度と投球速度の関係が明らかになり、投球速度を向上させるためには、重心速度を適切に変化させることが重要であることが示された。
- 特に、キック局面と踏み出し局面での重心速度の増加、およびリリース局面での急激な減少が鍵となる。
- トレーニング方法の開発や指導現場への応用が期待される。
どうやら球速をアップさせるという観点から見ると、ワンステップよりも強く飛べるツーステップの方が最適であることは間違いなさそうです。ただツーステップに耐える筋力や柔軟性、ブロッキングなどのスキルなどが無いとツーステップを上手く扱えないという側面はあると思うので、しっかりとトレーニングを積む必要はありそうですね。
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